80年代中期のロンドンからワールドワイドに波及していった”ジャズで踊る”というムーヴメントは、確実にジャズとその影響下にある多種多様な音楽の楽しみ方をフィジカルなものに変えてきた。DJによる限りないレアグルーヴの掘り起こしと、それらの音源にも敏感に反応しながらNU-JAZZを探求し続けるミュージシャン達が相互に刺激し合いながら、その歴史もすでに20年近く。アシッド・ジャズの全盛期からブロークン・ビーツなどを経て近年のハード・バップ回帰的な潮流に至るまで、繰り返し「もう出尽くした」と言われながらも常に世界中のどこかで誰かが”未開拓の領域=フロンティア”を切り開き続けてきた。で、現在進行形のクラブ・ジャズにもまだフロンティアと呼べる場所は残っているのか?

その答えのひとつを横浜から着実に示しつつあるのが、トランペット奏者isao osadaのオーガナイズによって2003年から始動した”アフロンティア”だ。

ジャズに限らずラテン、ブラジル音楽、レゲエなど、すべてのグルーヴ・ミュージックの源流としての”afro”と、NUでもFUTUREでもなく”frontier”という両語を冠したこのイベントが示すジャズのヴィジョンは、極めて自由でボーダレス。特に新旧のラテンやアフリカ音楽にも精通した3人のレジデントDJが繰り出す個性豊かな選曲は、いわゆるクラブ・ジャズの定石からかなり大胆にハミ出したセレクションで意表を突きつつも、黎明期のジャズに多大な影響を及ぼしたアフロ=キューバン音楽などの”源流”の豊かさを、カラフルかつダンサブルに再認識させてくれるだろう。

そんなダンス・フロアでライブやセッションを繰り広げるミュージシャン勢の方も、当然ながら一筋縄ではいかない。既存のジャズの領域外からも未開のクラシックスをディグしてくるDJ陣と、ジャズの本流を踏まえつつもその可能性をさらに拡張しようとする音楽家達。一見相反するような2つのベクトルを内包した“アフロンティア”は、ジャズの尽きない創造性と多様さを、これまでに誰も試みることのなかったアングルと発想から照らし出すことに成功している。

(writer/editor 吉本秀純)

afro(=音楽の源流)+frontier(=未知の領域) という
新旧の対比するメタファーを含み、
時代を超えた様々な音楽的要素を内包する。